極限まで省略された物語と抑制されたカメラワークにもかかわらず、全篇に湛えられるこの豊かさと艶やかさは、最早、マジックとしか言いようがない。
合理性のない愛ほど切なく美しいものはない。男女の業を正面から捉えた衝撃的な映画だった。二人の心がずっと離れないでいるように、私の心もこの作品から離れられないでいる。
素晴らしい音楽と美しい描写。一瞬たりとも目を離すことができませんでした。その当時の時代背景を、音楽でわかりやすく表現し、時に音楽が二人を引き寄せ合い、時に音楽が二人を引き離す。悲しく切ないラブストーリーに、心打たれました。
ノスタルジックな民族音楽と共に、夢の中を彷徨っているような映画でした。哀愁に満ちた音楽が、深い余韻を残します。
なんという美しい映画だろうか。言葉を超え、静かで雄弁なモノクロのフレームが、心に唯一無二の「物語」を映し出す。冷戦下、口ずさんだ「あの歌」が、出会いと別れを繰り返し、やがては「2人」の、珠玉の「ジャズ」になる。心が震え低温やけどが続く、世界一ミニマムでパワフルなラブストーリー。
モノクロであるからこそより鮮明に描き出された、悲しみと情熱と、陰鬱な美しさ。民族音楽として、また切ないジャズバラードとして、劇中何度も流れる「あの歌」は、時代に翻弄された恋人たちの言葉では伝えられない想いを語り、観る者に強烈な余韻を残す。
新発見の民族音楽、悲劇的なラヴ・ストーリー、優れた白黒の映像など、この映画を見たくなるきっかけが色々あります。どれをとっても十分なので、ぜひ見てください!
悲恋な純文学と言いたいが、これはなんと!西側東側、と揉まれながらも結局、最下層から来た女はブルジョアな男より凄すぎる。過去、スターリンの抑圧の社会主義であったことをこんなに描ける、監督凄いなぁ。でもやっぱコレ、ポーランド純文学やで。
美しいモノクローム、説明を排除し抑制された演出、男女の感情だけに焦点を絞り映画的に描いた愛の行方。間違いなく私の記憶に残るストイックな傑作恋愛映画である。
激しい旋律を奏でるようなズーラとヴィクトルの恋。離ればなれの時も二人の心は一つの歌で結ばれていた。歌も恋も人を酔わせ、惑わせる。歌を求める心と誰かを求める心はたぶん同じだ。この映画の本当の主役は音楽かもしれない。
60年代初期の<東欧ヌーヴェルバーグ>の再現的な継承。ホン・サンス等と並ぶ、<21世紀ヌーヴェルバーグ>の、異様なまでの傑作。
映像の美しさ、映画全体に感じる時代の雰囲気、音楽の新鮮さが刺激的に伝わってきた。今生きている時代、生活、人間関係は遠くの次元から見てみればとても幸福で恵まれているなと感じる。そして、こんな刺激的で少し切ない愛があるから歌は生まれ続けるのだと改めて思った。
この地上では、二人を結びつけた音楽すらも、愛を引き裂き、心を傷つける桎梏となる。息をのむほど美しく切ない最後の場面に至るとき、その風景を満たす不在と沈黙ゆえに、愛し合う二人を包む至上の音楽が聞こえてくる。
よけいな説明はすべて削ぎ落し、最小限のセリフと表情だけで綴られていくふたりの愛の歴史。それなのに、痛ましい歴史を背後に抱えたポーランドが見えてくることにも鳥肌が立った。大変なモノを見てしまったという感動で、胸がいっぱいになった。
変幻自在の撮影。加藤泰のローアングルならぬ、ハイアングルによる空間把握が見事。かと思えば主人公たちの魅惑的な表情にスッと迫ってみせる。最良のポーランド映画は、いつも不意打ちのように現れる。
愛に突き動かされ人生を重ねる二人の人間臭さったらない、本気で生きている。ズーラはファム・ファタル度100%の女性だ。モノクロームのミニマムで完璧な映像表現、それゆえ音楽が強烈に感情に訴えかけてくる。「あの歌」が、もはや私の頭の中をめぐって離れない。
冷ややかに美しいモノクロの映像のなかで、ズーラの歌は、民謡、ジャズ、ロック、ラテン……と、熱く熱く燃え上がる。それはヴィクトルが捨てようとして捨てきれない祖国の魂なのだ。
とにかく観てほしい。とても味わい深くて美しい映画だから、まばたきするのも惜しくなる。
パヴェウ・パブリコフスキのすごい映画『COLD WAR あの歌、2つの心』。ここでは苦しみが快活さの衣をまとい、天使と悪魔が愛の唄を一緒に作ろうとしている。(公式Instagramより)
Comments
著名人コメント
極限まで省略された物語と抑制されたカメラワークにもかかわらず、
全篇に湛えられるこの豊かさと艶やかさは、
最早、マジックとしか言いようがない。
是枝裕和(映画監督)
合理性のない愛ほど切なく美しいものはない。
男女の業を正面から捉えた衝撃的な映画だった。
二人の心がずっと離れないでいるように、
私の心もこの作品から離れられないでいる。
黒木瞳(女優)
素晴らしい音楽と美しい描写。
一瞬たりとも目を離すことができませんでした。
その当時の時代背景を、音楽でわかりやすく表現し、
時に音楽が二人を引き寄せ合い、時に音楽が二人を引き離す。
悲しく切ないラブストーリーに、心打たれました。
八代亜紀(歌手)
ノスタルジックな民族音楽と共に、夢の中を彷徨っているような映画でした。
哀愁に満ちた音楽が、深い余韻を残します。
川井郁子(ヴァイオリニスト/作曲家)
なんという美しい映画だろうか。
言葉を超え、静かで雄弁なモノクロのフレームが、
心に唯一無二の「物語」を映し出す。
冷戦下、口ずさんだ「あの歌」が、出会いと別れを繰り返し、
やがては「2人」の、珠玉の「ジャズ」になる。
心が震え低温やけどが続く、世界一ミニマムでパワフルなラブストーリー。
大江千里(ジャズ・ピアニスト)
モノクロであるからこそより鮮明に描き出された、悲しみと情熱と、陰鬱な美しさ。
民族音楽として、また切ないジャズバラードとして、
劇中何度も流れる「あの歌」は、
時代に翻弄された恋人たちの言葉では伝えられない想いを語り、
観る者に強烈な余韻を残す。
akiko(ジャズシンガー)
新発見の民族音楽、悲劇的なラヴ・ストーリー、優れた白黒の映像など、
この映画を見たくなるきっかけが色々あります。
どれをとっても十分なので、ぜひ見てください!
ピーター・バラカン(ブロードキャスター)
悲恋な純文学と言いたいが、これはなんと!西側東側、
と揉まれながらも結局、最下層から来た女はブルジョアな男より凄すぎる。
過去、スターリンの抑圧の社会主義であったことを
こんなに描ける、監督凄いなぁ。
でもやっぱコレ、ポーランド純文学やで。
綾戸智恵(ジャズシンガー)
美しいモノクローム、説明を排除し抑制された演出、
男女の感情だけに焦点を絞り映画的に描いた愛の行方。
間違いなく私の記憶に残るストイックな傑作恋愛映画である。
行定勲(映画監督)
激しい旋律を奏でるようなズーラとヴィクトルの恋。
離ればなれの時も二人の心は一つの歌で結ばれていた。
歌も恋も人を酔わせ、惑わせる。
歌を求める心と誰かを求める心はたぶん同じだ。
この映画の本当の主役は音楽かもしれない。
平田俊子(詩人)
60年代初期の<東欧ヌーヴェルバーグ>の再現的な継承。
ホン・サンス等と並ぶ、<21世紀ヌーヴェルバーグ>の、異様なまでの傑作。
菊地成孔(音楽家/文筆家)
映像の美しさ、映画全体に感じる時代の雰囲気、音楽の新鮮さが刺激的に伝わってきた。
今生きている時代、生活、人間関係は遠くの次元から見てみれば
とても幸福で恵まれているなと感じる。
そして、こんな刺激的で少し切ない愛があるから歌は生まれ続けるのだと改めて思った。
yui(FLOWER FLOWER/シンガーソングライター)
この地上では、二人を結びつけた音楽すらも、
愛を引き裂き、心を傷つける桎梏となる。
息をのむほど美しく切ない最後の場面に至るとき、
その風景を満たす不在と沈黙ゆえに、
愛し合う二人を包む至上の音楽が聞こえてくる。
小野正嗣(作家)
よけいな説明はすべて削ぎ落し、
最小限のセリフと表情だけで綴られていくふたりの愛の歴史。
それなのに、痛ましい歴史を背後に抱えたポーランドが見えてくることにも鳥肌が立った。
大変なモノを見てしまったという感動で、胸がいっぱいになった。
永千絵(映画エッセイスト)
変幻自在の撮影。加藤泰のローアングルならぬ、
ハイアングルによる空間把握が見事。
かと思えば主人公たちの魅惑的な表情にスッと迫ってみせる。
最良のポーランド映画は、いつも不意打ちのように現れる。
濱口竜介(映画監督)
愛に突き動かされ人生を重ねる二人の人間臭さったらない、本気で生きている。
ズーラはファム・ファタル度100%の女性だ。
モノクロームのミニマムで完璧な映像表現、それゆえ音楽が強烈に感情に訴えかけてくる。
「あの歌」が、もはや私の頭の中をめぐって離れない。
在本彌生(写真家)
冷ややかに美しいモノクロの映像のなかで、
ズーラの歌は、民謡、ジャズ、ロック、ラテン……と、熱く熱く燃え上がる。
それはヴィクトルが捨てようとして捨てきれない祖国の魂なのだ。
町山智浩(映画評論家)
とにかく観てほしい。
とても味わい深くて
美しい映画だから、
まばたきするのも惜しくなる。
アレクサンダー・ペイン(映画監督)
パヴェウ・パブリコフスキのすごい映画『COLD WAR あの歌、2つの心』。
ここでは苦しみが快活さの衣をまとい、
天使と悪魔が愛の唄を一緒に作ろうとしている。(公式Instagramより)
パティ・スミス(ミュージシャン)